井上わたるの和光ブログ

和光市選出の埼玉県議会議員。埼玉県政や和光市のことをわかりやすく伝えます。

2016.03.27
こんにちは。

先週末の金曜日、埼玉県議会2月定例会が閉会しました。

今定例会では、来年度予算案などの重要議案の他、
議員提案による「手話言語条例」も成立しました。






県内の聴覚障害者の方々も傍聴に訪れて、
手話通訳により議会審議と採決の瞬間を見届けていただきました。


普段は設置されないトイレ案内板も登場して、議会としてお迎えしました。
採決後は両手をキラキラと振る「拍手」を意味する手話が傍聴席中で行われていました。


埼玉会館で開催された鳥取県知事を招いての勉強会からおよそ2年半。
県での条例制定について考え続けてきました。全国 5例目として成立致しました。
さて。

半年に渡って審議をし、このブログでも詳しく報告してきた
「埼玉県まち・ひと・しごと創生総合戦略」の採決が行われました。

私が過去の議員生活でも最も力と時間を注いだ案件といっても過言ではないと思います。
県が提案した「原案」には全会派が賛成しました。

そして自民党が提出した「原案に47項目の追加を行う修正案」には、
自民、公明、共産、改革の会が賛成し、民主党と、我が会派「無所属県民会議」は反対を表明しました。


反対を表明するのは、修正案には「数値漏れなどの不備があったこと」や「これまでの特別委員会の審議を尊重した内容になっていない」など、複合的な理由があったからです。


私はその趣旨を説明する「討論」に会派を代表して立ちました。


下記にその内容を綴ります。
 

====

議席番号18番 無所属県民会議 の井上航です。
 
第157号議案「埼玉県まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定について」、修正案に対する反対討論、並びに原案に対して賛成の立場で討論致します。

 原案は、地方創生の推進にあたり、人口減少や異次元の高齢化などの構造的な変化に対し、「利便性の高い鉄道・交通網」、「都心にはない豊かな生活・自然環境」などの本県の「強み」を最大限活用するという視点で、企業誘致や子育て世代の誘導、観光振興などの施策や取組を盛り込んでいます。
 
また「子育てに魅力を感じるまちづくりの推進」や「移住の促進」、「東京オリンピック等を契機とした地域の活性化」など、地方創生に向けた新たな切り口の施策も盛り込まれており、今後5年間の地方創生に資する内容であると考えております。
さて、この原案は10日間に及ぶ、特別委員会の審査を経て、素案から原案へとまとめられたものだということを忘れてはなりません。
その審査の過程で、私たち会派は提言を重ね、改善できる可能性のある点については質疑の中で、その旨の答弁を引き出してきました。また11月16日開催の特別委員会にて各会派から募った「意見・提言」の機会も十二分に活かし、我々の意見を反映させてまいりました。だからこそ、この原案に賛成できるのです。


例えば、「埼玉県の人口の状況と将来見通しの項目」では、人口推移の試算について「試算の計算式を明記すべき」との提言を行いました。この提言を踏まえ、原案では合計特殊出生率を短期的な数値目標とせず、希望出生率とは「県民の希望を実現した場合の合計特殊出生率」と定義することとなりました。こうした審議はその先の議論において欠かすことのできないものとなったと考えております。
この他にも、若年者を中心とした就業支援の項目に「伝統と文化を尊重とする教育の推進」と、我々が重視する教育に関する記載が盛り込まれたことも高く評価しています。


また、今回の修正案提出に至る議論でも注目された「PDCAの強化」については、我が会派からの意見・提言をキッカケに5つのKPIが追加されています。

このように、多くの改善がなされ、12月定例会に正式に議案として提出された「原案」を支持するものであります。


一方、自民党県議団から提出された修正案でありますが、これは明らかな「不備」を抱えた議案でした。


例えば、修正案で追加されたKPIには「女性キャリアセンターを活用した就職者の増加」や「ハローワーク浦和・就業支援サテライトを活用した就職者の増加」と記された項目があり、数値目標が設定されていません。


また、基本指標に加えられた「経営革新支援等による付加価値創出額」については、平成31年度に1兆719億円との数値目標を掲げながら、現状値が記載されていなません。これでは肝心のPDCAを機能させることなどできません。


3月18日開催の特別委員会で、我が会派は修正案のうち、今述べたようなPDCAに関わり新たに追加された基本指標やKPIについて提案者に重点的に質疑を行いました。しかしながら、その質疑に対して、提案者の答弁は「PDCAということでご理解ください」という趣旨の答弁が繰り返されました。明らかな不備を抱え、そして明確な答弁・説明もされない修正案には賛成しかねます。


これらの「数値目標を設定する」ことや「現状値」を記すことは、特別委員会の審議の中で、全会派の共有認識でした。提案者の会派は、特別委員会に最も多くの委員が所属しているにも関わらず、なぜこのような事態に至ってしまったのでしょうか。次の要因があると考えております。



それは、自民党県議団内のチェック機能が機能してなかったことです。


プロジェクトチームで修正案のとりまとめを行ったということでしたが、特別委員会の委員であれば、現状値の記載や数字による指標設定を設けることは当然の認識のはずです。そうした団内でのチェック機能が働かず、こうして議案として提出されてしまったことも悔やまれてなりません。


修正案では、PDCAサイクルを強化し、毎年度検証を行い、必要であれば修正も行う…としていまので、まずは来年のPDCAで、これらの点をしっかりチェックし、修正すべきだと指摘させていただきます。


(一時中断)(その後、ここから再開)


今回、埼玉県議会では戦略を議決事項とし、議会もその策定に関わりましたが、戦略に基づき事業を推進するのは知事をはじめとする執行部です。
今回の修正案では、PDCAサイクルにまつわる文言の中に「毎年度検証を行い、その結果を議会に報告する」と付け加えられていますが、議会はこの報告を受けてどのように行動するのかは、特別委員会での質疑を経てもなお曖昧なままです。これで県民は納得するのでしょうか。 


議会としてこの戦略の推進にどのような役割を果たしていけるかを、議会全体で議論する必要があると考えております。


また、各会派からの意見・提言では「これまでにないような大胆で新しい発想を」という意見もありました。しかしながら、PDCAサイクル以外の具体的な新しい発想の施策は見当たりません。


そして「具体的施策の羅列をしないこと」も求めていました。先日の特別委員会では「羅列が増えたという認識はない」と答弁していましたが、修正案を読めば、結果として羅列を増やしたことは誰から見ても一目瞭然であります。これも修正案に反対する理由です
最後に。


今回の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定プロセスは、今後、行われる様々な行政計画の策定のプロセスにも教訓を残しました。


・議決事項にすべきかどうか
・専門の特別委員会を設置すべきかどうか
・修正案という方法ではなく、委員会審議の意見調整を通して改善する方法はなかったか 


今後の行政計画の審査・策定にあたっては、合意形成や意見調整を重視した議会運営の必要性を強く訴え、討論と致します。
 
====





この討論の途中に、修正案の提案者である自民党県議団が猛反発を見せました。



「自民党県議団内のチェック機能が機能してなかった」という趣旨のところです。
 
自分の声が聞こえないほどのヤジというのは初体験でした。
「討論」が行われているにも関わらず、議長の采配による休憩ではなく、動議を経て休憩に突入しました。
おそらくは(可能な範囲で調べましたが)県政史上初、前代未聞の出来事であろうと思います。


私は他会派について例えば暴言を吐いた訳ではありません。
内部のこと、というより 「議案提案者として責任が重い。不備を抱えた修正案を提出することを事前にチェックできなかったのか」という指摘をしたにすぎません。


過去にも、他会派内の考え方や体制に触れる討論や質問というのはあります。
それでも、今回のように中断させるというのは過去にありません。
多数を持っていれば、自身に不都合な発言があったら止められる、ということはあってはなりません。


他の会派の議員の方からも、応援の声や公平な議事運営をするべきとして議会事務局への抗議も含め「自由な言論を守る」という点について共に声を上げてくれました。


しかし、いつまでも中断していても得るものは大きくありません。
この部分だけ、後日訂正する旨を了承し、再開したのです。
 



翌日の新聞にも様々な角度で取り上げられました。



(読売新聞2016.3.26)






(産経新聞2016.3.26)
今回、訂正を議場で求められたことは事実です。
このような対応に応じることになったのは誠に遺憾です。



しかし、県民の皆さま。


このような前代未聞のことが平然と起きる県議会で良いのですか?


私達、無所属県民会議は本当に県民の皆さまのためになる県政実現のためにこれからも戦ってまいります。



私は来年、議会運営委員会に所属することも決定しました。
これまで以上に政策提言・政策論争の炎を燃やし続けていきたいと思います!







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