井上わたるの和光ブログ

和光市選出の埼玉県議会議員。埼玉県政や和光市のことをわかりやすく伝えます。

2024.12.31
この投稿は今年最後の投稿で書いています。

さて、埼玉県議会の12月定例会の最終日(12月20日)、自民党県議団などがインボイス(適格請求書)制度の廃止を求める意見書案を提出し、賛成多数で可決されました。

この動きに対して、SNSなどでも

「おっ!地方から国への反対の狼煙か?」

「留守番禁止条例の汚名挽回になるか?」

「やるな、埼玉県議会の自民党!」

といった声があがっていました。


でも、是非、それらの評価は、これから語ることを読んでからにしてほしいと思います。



◆インボイス制度を巡る自民党議員団の変節


〇まず、先に申し上げたいのは埼玉県議会では、これまでもインボイス制度に対して反対の声を上げてほしい、という声は寄せられてきました。


〇具体的には、令和4年6月定例会 及び 令和5年9月定例会の2度にわたり、国にインボイス制度導入中止を求める意見書を提出してほしいとの『請願』が出されましたが、これに対して自民党は「不採択」の立場でした。


〇自民党議員団は過半数を有しているため、他が「採択すべき」と主張しても、自民党の採決態度がそのまま結果となります。


〇また、過去に、令和4年2月定例会 及び 令和4年6月定例会の2回に渡って、共産党が「インボイス実施中止を求める意見書」の提出を提案しましたが、自民はこれには乗らず、提出を見送っています。


※埼玉県議会では、各会派が出したい意見書を議会運営委員会に持ち寄ります。その後、超党派で提出できるかどうかの調整を議運の副委員長が水面下で行う、という流れです。


※※そのため、過半数を有する自民党が〇といえば提出となり、×といえば、提案見送りとなる。結果として、自民党以外の会派が提出を目指した意見書が通ることは、ほとんどない。


〇インボイス制度関連の意見書が通ったこともあります。


〇令和4年9月定例会 及び 令和5年6月定例会の2回に渡り、部分緩和(例:シルバー人材センターや農業者に免除規定を設けてほしい・もっと国の支援措置を充実させてほしい等)を求める内容について可決・成立しています。


〇ただ、いずれも「インボイス制度自体は推進」することが前提の内容でした。


〇その上で今回の意見書です。制度開始から1年。今は、3年間の経過措置期間中です。それにも関わらず180度異なる立場へ舵を切ったのが、今回の意見書です。


〇意見書の中に挙げられた「経理事務などが小規模事業者に過大な負担となっていること」現状は、制度導入前からから指摘されていた内容であり、このタイミングでの変節は、過去と議決行動との整合性は取れていない、と考えるのが通常の感覚だと思います。



◆小規模事業者等から聞こえる様々な声

〇一方で、小規模事業者の皆さまからは、制度導入前には不安や心配の声が寄せられています。一方で、導入後は安定的に制度運用されているという声も届いています。


〇案文では、「エネルギー価格や原材料費の高騰の長期化」や「人材不足の深刻化」を経営状況が厳しい要因として上げながらも、「今やインボイス制度そのものを廃止することが最良の策であると言わざるを得ない」と、インボイス制度の廃止こそが最善策と断定した表現(書きぶり)をしています。


〇その点について事業者からは「インボイス制度の廃止以上にガソリン補助金縮小のほうが経営圧迫に直結する」といった声も聞いています。



◆今定例会の請願の継続審査


〇その上で、今回、私が最も問題視しているのは、12月定例会には、請願第7号として、「国にインボイス制度廃止の意見書」提出を求める請願が出されていた点です。


〇その請願を一切審査しないで「継続審査」としておきながら、同趣旨の意見書を出す、というプロセスに、私は賛同できません。


〇委員会で各会派から発言・審査した結果、「やっぱりもう少し慎重に調査しよう。そのために継続審査が必要だ」っていうなら分かります。でも、一言も審査せず、いきなりの継続審査の動議でした。


〇この請願を審査する「総務県民生活常任委員会」では、継続審査の動議を申し出る際の理由が「今議会においてインボイス廃止も含めた検討を求める意見書を提出するべく団内での計画予定となっております。」との発言でした。


〇これは、あくまでも自民党議員団の都合です。


〇請願は、県民の声を議員が紹介議員となり代わりに議会で発言するものです。


〇請願を継続審査にして、今定例会中に自分たちが意見書を出せば、過半数を有している以上、自分たちが意見書の言い出しっぺ(=発案者)になることができます。


〇そうすれば、「共産党の提案に乗った」…のではなく、「自民党主導で意見書成立」という評価を得ることが出来ます。事実、マスコミ報道では、この経緯や過去の採決との矛盾は報じられず、今回の可決だけが報じられて、一躍、経済的に苦しい中小企業の味方…いう評価になるのです。


〇ただ、多くのメディアが表面的な部分だけを報じる中で、きちんと報じてくれた新聞社もあるので、それを写真で共有できればと思います。


〇ここまでを総括すると、請願の内容を審査した上での継続ではなく、審査を行わずに継続審査として同趣旨の意見書を出すことは、仮に請願者の意に沿う意見書が出てくるのだとしても、議会として請願を軽んじるような行動は自重すべき行動だと考えております。


〇今回の件で言えば、本当に小規模事業者の声を聞き、議会として、国に声を上げるべき、と考えれば、メンツや手柄のことは横において、堂々と請願に賛成すればよかったのです。



◆制度開始から1年。全国の地方議会で
廃止」の請願・意見書が成立した事例はない


〇私が調べた限り、制度導入後、都道府県議会において「制度廃止」を求める請願や意見書が成立した事例はないと認識しています。


〇複数税率導入を背景に導入が進められたインボイス制度を、複数税率が維持された中で廃止することは、その制度設立の趣旨を否定することにもなることから慎重になるべきだというのが、私の意見です。


〇そのため、消費税減税(軽減税率を採用せず、一律5%に下げ揃える)とセットの請願には、私たちの会派も賛成してきた経緯がありますが、ただただインボイス反対、という今回の意見書には賛成すべきではない、と考えました。


〇もちろん、我が会派内でも双方の意見がありました。今回は会派でより多数となった行動を取ったことをご報告します。


結びに。


◎冒頭で「#埼玉共学化反対 の方にも読んでほしい!」と書いたのは、今回の件でも分かるように、自民党議員団はその多数をもって、自分たちの主張を通すためには、「過去との整合性」や「通常の議会運営の感覚」といった“常識”を飛び越えた動きをする、ということです。


◎私自身の考えや採決行動は、残念ながら県議会の中では少数派となります。それを例年以上に痛感した1年でもありました。


◎それでも、「論理的に」「正論を」「県民のため」に続けることが大切だと信じています。


◎昨日、今年のレコード大賞を受賞したMrs. GREEN APPLEの「ライラック」の歌詞に次のようなフレーズがあります。


♬「感じたことのないクソみたいな敗北感も どれもこれもが僕を突き動かしている」♪


これが、私の想いとも重なります。


◎来るべき令和7年も、皆さまの声に応えられるような活動を行なっていきたいと思います。


◎皆さまもよい新年をお迎えください。


令和6年12月31日
埼玉県議会議員  井上 航
  BackHOME : Next 
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 10 11
12 14 16 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
井上わたる
年齢:
45
性別:
男性
誕生日:
1979/10/01
バーコード
ブログ内検索

井上わたるの和光ブログ wrote all articles.
Powered by Ninja.blog / TemplateDesign by TMP