井上わたるの和光ブログ
和光市選出の埼玉県議会議員。埼玉県政や和光市のことをわかりやすく伝えます。
2023.10.10
連日、多くの方から自民党案に対する厳しい意見、そして自民案に反対した我々に対して支援のお声を頂戴しています。
状況は日々刻々と変わっているようです。その流れにしっかりと対応していきたいと思います。
今回の自民案に対しても「酷暑の中の車への置き去りや劣悪な環境への放置などを撲滅したい提案者の理念は理解できる」とおっしゃる方も大勢いらっしゃいます。
そうです。そこに特化した内容であれば、反対の声はおそらく出なかったでしょう。
しかし、自民案の条文ではそこは読み解けず、しかも提案説明において
「小学校1年生から3年生だけでの登下校」や
「18歳未満の子どもと小学校3年生以下の子どもが一緒に留守番をする」
「小学生だけで公園で遊びに行く」
「児童が1人でお使いに行く」
などの行為を「虐待」と説明しました。
私たちの会派では、自民案の問題点を指摘する一方で、「こういうふうに改正するなら、良い条例になるのではないか?」という修正案を取りまとめました。
以下にご説明します。
◆放置の定義について
【自民案】では
・小学3年生以下の当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置をしてはならない。(義務)
・小学4~6年生の当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置をしないよう努めるとする(努力義務)
となっている【第6条の2】の追加条文ですが、私たちの修正案では、
・小学6年生以下の当該児童を、前条第一項及び第二項に規定する安全確保の配慮に欠く放置をしないよう努めなければならない。
としました。
小学生全体を「努力義務」にしたことで「緩和」した…と報じられることが多いのですが、実はポイントはそこよりも、「前条第一項及び第二項に規定する安全確保の配慮に欠く放置」の部分なのです。
今回、話題になっている「埼玉県虐待禁止条例」は既に存在しており、今回問題になっているのは、その改正案=つまり、追加する部分です。
実は、この自民案でも、私たちの案でも【第6条の2】を追加しますが、既存の虐待禁止条例には【第6条】があり、そこにはこう書かれているのです。
=====
(養護者の安全配慮義務)
第六条 養護者(施設等養護者及び使用者である養護者を除く。)は、その養護する児
童等の生命、身体等が危険な状況に置かれないよう、その安全の確保について配慮し
なければならない。
2 養護者(施設等養護者及び使用者である養護者に限る。)は、その養護する児童等
の生命、身体等が危険な状況に置かれないよう、その安全の確保について専門的な配
慮をしなければならない。
======
ざっくり言うと、第1項は、一般の親などの保護者を指し、第2項は施設職員(保育士や学童指導員などのプロ)を指していて、それらの者は「児童の生命、身体等が危険な状況に置かれないよう、その安全の確保するよう配慮しなさい」と書かれています。
つまり、問題にすべきは、こういう果たすべき配慮を忘れた・していない場合です。
具体的には、「灼熱の車の中に子どもを置き去りにする」…などが当てはまります。
そのため、
「こういう(=前条第1項及び第二項に書いてある)危険な(=安全確保の配慮に欠く)放置をしないよう努めなければならない。」
という文言にしているのです。
これならば、一般的な子どもだけの留守番や登下校、公園で遊ぶなどは対象外となります。
「今回の改正は条文の追加である」「なくしていくべきは、悲しい事故が起きた車内放置などの事例である」という基本に立てば、自民案の段階でもこういう条文に辿りついたようにも思いますが、子どもだけで過ごすこと自体を禁止したため、実現性もなくなり、問題を抱えた条文になったのだと思います。
◆解決策について
自民案では
・県は市町村と連携し、待機児童に関する問題を解消するための施策そのたの児童放置の防止に資する施策を講じるものとする
とあります。
例えば、車の放置と待機児童対策って本当に関係が有るでしょうか?
遠因ではあるかもしれませんが、直接的な要因とは言えません。
むしろ、商業施設における「車内放置禁止。それこそ命に係わる問題だ!」という広報啓発のほうが余程、放置事例を直接的に救うことになるかもしれません。
ひとり親家庭や共働き世代への支援は重要です。しかし、それを本来問題視していた故意・過失により生じる放置だけではなく、放置の範囲を拡大し、その上で待機児童問題まで絡めようとするから、条例として無理が出たのだと思います。
◆通告・通報の義務について
実は、この条文については、上位法である「虐待禁止法」でも、「万一、虐待を見つけたら通報すべし」と国民の義務の形で定められているので、この条文があること自体はそんなに問題になるとまでは言えません。
現に、他自治体も通報義務が規定されている条例が制定されていて、例えば三重、東京、京都、千葉、福島、福岡、茨城、群馬、秋田の9都府県と聞いています。
但し、自民案では、子どもたちだけで居るシチュエーション全てをNGとし、特に小学三年生以下は「させてはならない」と義務としました。その上で、さらに通報義務を課せば、それは現在危惧されているように、通報社会のような印象を与えても仕方ないと思います。
一方、私たちの修正案でも、著しく配慮に欠く放置(=炎天下の車内放置)などを見つけた場合には積極的に通報をお願いしたいという意図を組み入れるため、通告・通報の規定は活かすことにしています。
・・・以上、長くなりましたが、これが自民案と私たち無所属県民会議が考えた修正案の違いです。
本当は、それぞれの案の良いところ・課題を「議会」というくらいですから、喧々諤々の議論を重ねれば、より良い条例案になったかもしれませんが、今回、私たちが修正案を出したとき、自民党・公明党からは1人も質問の挙手をしませんでした。ひとつも質問がなかったのです。
実はこれが今回特別か?というと、そんなことはなく、過去に自民党の原案に対して、私たちが修正案や対案を出した時も一度も質問もありませんでした。
ひょっとしたら原案提案者以上に詳しく調査・検証をしたんじゃないか?…
そう思いながら、毎回毎回「では質問はないため、採決に移ります。」と、圧倒的過半数をもって多数決で決着してきました。
それが埼玉県議会です。
しかし、今回、既に委員会での結果は出てはいますが、ひょっとしたら、その長い歴史が変わるかもしれません。
既に自民党県議団と、自民案に反対した会派…との戦いではなくなっていることを実感しています。
これまで何でも多数ということで、議論も避けて、数で決め続けてきた県議会の大会派に県民の意識・県民の怒り、そして広く国民の関心が向けられているのだと思います。
今回の自民案は、県民、そして何より子どもたちのために、絶対に通すわけにはいきません。
皆さまの力をどうか貸してください。
宜しくお願い致します。
埼玉県議会 無所属県民会議
井上 航
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